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01.『都名所図会』「凡例」(翻刻)

凡例

一 此編の巻首には平安城をあらはし、其四方を帝都鎮護の四神に官どらしめ、神社の芳境、佛閣の佳邑、山川の美観等、今時の風景をありのままに模写し、舊本花洛細見圖を増益して時々其遺漏を巡歴し、摂社、艸庵たりとも一宇も洩ず、幼童の輩、坐して古蹟の勝地を見る事を肝要とす。
一 文談は、宮古歳時記、山城名所紀行を種とし、且、舊記に委は其大意をしるし、又、脱漏あるは微細に捜り求てこれを撰書する事を専とす。
一 圖中に境地広大なる所は究て細画なり。狹少なる神祠小堂は又尓らず。故に圖毎に人物あり。形容至って微少なる人物は其地、広大としるべし。形容微少ならざるは、境地狹少なり。譬ば加茂社と野宮との境地を知らするの便りなり。
一 圖中の間に人物の大画あり。四時の佳観を賞して遊楽の地を知せんためなり。洛東の花見、宇治蛍狩等なり。
一 圖中の名所に連綿の地あり。圍の上に圓票を以てこれを繋ぐ。八幡神宮寺より宿院、石清水あるひは宇治の橋寺、惠心院、興聖寺などの連綿の地なり。
一 比叡山の圖あり。東塔、坂本はみな近江なり。しかれども西塔より連綿の地にして除くこと能はず。山崎、谷観音も摂州の界なれども、連綿たればこれを圖す。