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08.『絵本 都の錦』序文
絵本花洛錦序
画工政美一ッ冊の画帖を携へ来リて。予に題号と序文を乞。すなはちいま以て一チ覧すれば。石婦図南女が雑話に聞ケる。盧舎那殿の浄刹を目下に瞭然たらしめ。祇園清水智恩院。好因弥需ずして金閣寺を拝見せしむ。予扇をさつとひらきあふぎたてて感じて曰。嗚呼子が山水の画に於る笠翁笠を脱て土下座を切。王維もう(輞)せん(川)を被つて吸息を入ルべし。此画譜ただに婦女子の看を悦ばしむる為のにならず。見ぬ人の京物語。間合話の一チ助たるべしと。ただちに悪筆を揮つて絵本花洛錦と標題す。都を図する錦絵なる所。柳桜をこきまぜての歌詠の心に因めるよしを。語て以て叙言とす。
丁未のはつ春
月池隠士万象亭述「卍ゾウ(象形陽刻)」「江戸前(陰刻)」
北尾蕙斎政美写「子景(陽刻)」「政美之印(陰刻)」
松月舎すいら書「垂蘿(陽刻)」「福田洪印(陰刻)」
画工政美一ッ冊の画帖を携へ来リて。予に題号と序文を乞。すなはちいま以て一チ覧すれば。石婦図南女が雑話に聞ケる。盧舎那殿の浄刹を目下に瞭然たらしめ。祇園清水智恩院。好因弥需ずして金閣寺を拝見せしむ。予扇をさつとひらきあふぎたてて感じて曰。嗚呼子が山水の画に於る笠翁笠を脱て土下座を切。王維もう(輞)せん(川)を被つて吸息を入ルべし。此画譜ただに婦女子の看を悦ばしむる為のにならず。見ぬ人の京物語。間合話の一チ助たるべしと。ただちに悪筆を揮つて絵本花洛錦と標題す。都を図する錦絵なる所。柳桜をこきまぜての歌詠の心に因めるよしを。語て以て叙言とす。
丁未のはつ春
月池隠士万象亭述「卍ゾウ(象形陽刻)」「江戸前(陰刻)」
北尾蕙斎政美写「子景(陽刻)」「政美之印(陰刻)」
松月舎すいら書「垂蘿(陽刻)」「福田洪印(陰刻)」