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06.京都の十日戎

Source:『都林泉名勝図会』巻一之坤

〜建仁寺門前 十日笑姿祭〜

 京都の「えべっさん」といえば、四条通縄手下るの西側にある恵美須神社です。
 建仁寺の御開祖である栄西禅師は、宋からの帰路、海上で嵐に遭遇します。それを海の神であるえびす様の御加護によって災難を免れます。ですから、もともとは建仁寺の境内に祀られていたものが、応仁の乱の後、この地に移されたといいます。
 絵の手前、左に見えるのが鳥居ですから、東北の方向から見た境内の賑わいを描いていることがわかります。商売繁盛を願う人々で境内は埋め尽くされています。絵の左側では福笹とともに、福俵や福枡、福小判、大福帳、打出の小槌、蔵の鍵などなど、お金に関係のある縁起の良い道具を模した飾りも売られていることがわかります。これを福笹に飾り付けるのです。
 絵は東北の方向から見たもの、というのは先に述べたとおりですが、これには理由があります。えびす様は耳が少々遠いため、本殿南側にある羽目板を手で叩き、大きな声で願い事を言わなければなりません。例えば、東南の方向から描いてしまうと、南側の様子を絵から窺い知ることができなくなってしまいます。福笹を売る出店も南側にありますので、恵比須神社の活気を描くには東北の方向から描くのが一番最良だ、ということになるのです。
 この付近の町名は小松町。そういえば絵の右側には松の木が見えます。このようなところにも、地名を暗示させるようなアイコンが細かく描かれているのが「名所図会」の挿絵なのです。

From:Yuki NISHINO