10.高雄の紅葉狩り
Source:『都林泉名勝図会』巻四
~高雄、看丹楓~
高雄は紅葉の名所の第一です。江戸時代の大阪の文人、西沢一鳳は『綺語文草』のなかで以下のように記しています。
楓葉の眺めは、一に高雄、二に箕 面、三に栂尾にて、竜田、通天は 遙かに劣れり。絵の左側、お供を連れた僧侶がいるのは神護寺の山門前。左右を横切っているのが清滝川です。橋の上に男が二人。それを見て女性の手を引き、渡ろうとする男。「これ、あきません」、女性は男を咎めます。それもそのはず、高雄山神護寺は女人禁制、橋の左側にも石柱が建っています。また、「下乗」の文字も見えますから、ここからは徒歩でしか入山できません。
橋の手前には茶店が見えます。右端の屋根が本店、渓流の眺められるのは別館といったところ。女人禁制の石柱の後ろにある床几もまた、この店のもの。お供が茶店の女中に酒のおかわりを頼んでいます。酒が来るのを待ちながら、法体の男は色紙を手に一首詠もうとしています。「詠題はやっぱり、高雄にて紅葉を詠める、ですな」。また、本文には「深秋之頃は紅錦を曝すがごとぐ、人の面までも紅を彩るに似たりける」とあります。これは紅葉の色が顔に映えて赤くなるというだけでなく、素晴らしい紅葉を肴に酒がすすんでしまい、ついつい酩酊してしまう、といったことを暗に示しているのです。
江戸、吉原の高尾太夫は、この紅葉の名所である高雄にちなんで名づけられましたが、こちらもまた、その美しさに男性陣は酒がすすんだことでしょう。
From:Yuki NISHINO