11.壬生狂言
Source:『諸国図会 年中行事大成』巻二之下
~洛西壬生寺、大念佛會扮戯の圖~
壬生寺は律宗の大本山。寺伝によりますと、平安時代の創建です。当寺では壬生狂言が演じられます。この壬生狂言、鎌倉時代に壬生寺を興隆させた円覚上人がはじめたもので、「壬生大念仏狂言」というのが正式名称。正安2年(1300)、大念仏会の際に、上人が身振り手振りだけで仏の教えをわかりやすく説くことを考えつきます。いわゆるパントマイム(無言劇)の形式です。今日では本堂北、綾小路通り側に建てられた大念仏堂で、節分、春期、秋期に上演されます。
絵の中央、舞台には「大念佛」の文字。旧暦の3月14日から24日に催される壬生狂言は、春の陽ざしが強くなりはじめる時期ですから、UVケアのため、みな、傘を差しての見物です。桟敷席も設けられ、目の前で繰り広げられる滑稽劇に見物客の顔から笑みがこぼれています。絵の中央手前、井戸舎の前には二本差した侍の姿。この日は警備を兼ねての観覧です。「あそこの桟敷席が空いているようだ」と、お供に話しかけています。
『諸国図会年中行事大成』本文によると、演目は以下のとおりです。
「桶とり」「焙烙割」「花盗人」「釣狐」「道念」「賽河原」「猿」「餓鬼責」「熊坂」「羅生門」「花折」「川渉り」「大原女」「閻魔角力」「嶋渡り」「大江山」「船弁慶」「節分」「夜鳥」「祢宜山伏」「猿座頭」「時女」「愛宕参」「紅葉狩」「酒蔵」「腹つづみ」「葵の上」「湯立」「棒振」以上、二九番。
さまざまな演目がありますが、すべて、狂言が念仏をも兼ねているのです。
From:Yuki NISHINO