12.初午詣の伏見街道
Source:『再撰花洛名勝図会』巻四
~(稲荷初午詣)其二、伏見街道群集之圖~
江戸時代、京都の春は初詣だけでなく、恵比須神社の十日戎、稲荷神社の初午と、イベントが目白押しです。特に、全国各地にある稲荷神社の総本社の祭礼とあって、多くの参詣客で賑わいました。絵は初午の伏見街道の殷賑ぶりを描いたものです。
和銅4年(711)2月の最初午の日、稲荷山に祭神が降臨されたことにちなみ、「初午祭」が催されるようになりました。この日は御神木である杉「験の杉」を授かり、その年の豊作を祈願するのです。
絵の中央奥には、伏見の名産、伏見人形を商う店が見えます。店の左端で指さす男は稲荷のお狐さまを注文しています。稲荷神社は狛犬ではなく狛狐ですから、一対でワンセットです。他にも、大黒さま、神馬、金太郎さん。おくどさん、お城、福良雀。
通路を挟んで右側には、布袋さま。寝牛に武者、力士、神馬、太夫などなど。布袋さまは売れ筋商品で、売り子が手に持ち客に確認しています。「これで、よろしおすか」。実はこの布袋さま、毎年、小さいものから順に1体ずつ、7体揃えると縁起がよいとされていました。もしも7体揃わないうちに家に不幸があると、もう一度最初から揃え直す、ということになっていたのです。
街道を行き交う人々、ことに、絵の左側から右側へ歩く人々は、帰路。この日は稲荷山山上で酒宴が催され、伏見の美酒にほろ酔い気分で浮かれている参詣客の様子を描いています。
From:Yuki NISHINO