15.大堰川、三船御遊
Source:『都林泉名勝図会』巻五
嵐山の大堰川で行われる三船祭は、車折神社の例祭。車折神社を出発した神幸列は渡月橋へ向かい、中之島公園から御座船に乗り込みます。現在では5月の第3日曜日に行われています。
社伝によりますと、昌泰元年(898)9月の宇多上皇行幸のおりに催された御船遊びにちなむといいます。また、「三船」は、白河天皇の大堰川行幸のおり、漢詩に優れたもの、和歌に秀でたもの、奏楽に長じたものを、それぞれ分乗させてうち興じたという故事によります。
『都林泉名勝図会』に載る挿絵は、白河天皇の御宴の様子を描いたもの。挿絵の左上部の解説によりますと、奏楽の名手として知られる源経信が遅参する。急ぎ川岸で「どの船でも宜しいので乗せてください」というと「音楽の船に乗りなさい」との勅命が下る。折りしも帝は御気色麗しからず、乗船した経信が加わり妙曲を奏で始めるや、帝をはじめ皆が一様に興に入った。芸に秀でたもののなかでも特に優秀であると皆に認められるには、わざと遅れてやってきて場を盛り上げるのである。
川岸で右手に扇を持ち、左手で帝のおわします船を仰ぎ見るのが、かの源経信。右側に描かれている奏楽の船が帝の勅命により川岸に寄って来る、という様子が描かれています。川岸には柳や楓が茂り、花の季節とはひと味違った情趣を添えています。
From:Yuki NISHINO