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09.嵐山の十三参り

Source:『都名所図会』巻四

~嵐山、法輪寺、渡月橋~

 嵐山は今も昔も諸人で賑わう遊楽の地です。大堰川の右岸の嵐山と左岸の嵯峨、亀山を繋ぐ橋が渡月橋。
 渡月橋の嵯峨、亀山側には『平家物語』の「小督」の巻で有名な法輪寺があります。後宮から失踪した小督局を想う高倉帝が、弾正少弼仲国に捜索させたところ、亀山で名月の夜に琴を弾いていた小督局を見つけます。このとき弾いていたのは「想夫恋」、恋の曲。小督局もまた、帝を想っていたのでした。
 「嵯峨の虚空蔵さん」の名で親しまれている法輪寺。ここはまた、「十三参り」も有名で、4月13日(旧暦では3月13日)には多くの参拝客で賑わいます。十三参りとは、13歳になった男女が虚空蔵菩薩から福徳智恵を授かることができるようにとの願いで参拝するものです。さらに厄難除けの祈願もいたします。けれども、帰路、渡月橋を渡り終えるまでに後ろを振り返ると、せっかく授かった智恵を取り返されてしまうといいますから、ご注意を。
 絵を見ると、傘をさした老若男女であふれる様は今日にもひけをとらぬほど。右岸の嵐山側には沢山の桜が見、十三参りの参拝客のみならず、観桜客もいるのです。

 子供見よ 桜の月も 十三参り   八十一叟 簫山
 絵の中央にあるこの発句は、たった今授かってきた「福智満の智恵」を我が子が逃すことのないように、嵐山側に見える桜や月を見させることで、振り返るのを防ぐ親の智恵を詠んだもの。親御さん達もかつてはここで智恵を授かったのでしょう。

From:Yuki NISHINO