31.祇園の御輿洗い
Source:『都林泉名勝図会』巻二
~祇園神輿濯邌物~
江戸時代、5月の晦日には祇園社で「神輿洗い」が行われていました。この行事について、名所図会本文には『倭記事』を引用して、以下のように記されています。
五月晦日生子の男女祇園の社に詣して、おのおの杉葉を受けて禍災を祓ふ、これを茅抜と称す。夜に入りて神輿三基を拝殿に出だし祭式を勤む。(略)また祇園鴨川の女伶妓婦の輩、風流に姿を優して花の盛りの匂ふがごとく、身には錦繍を纏ひ、あるは女も男の風俗に変はり、若きも老の形となり、前はやし後囃子に糸竹の音うるわしく、これを見んとて社頭二軒茶屋、薮の下、祇園町の群集は稲麻のごとく、尺地の間もなかりけり。これをみると、この日祇園社を訪れた氏子たちは、杉の葉を授かり災いを祓う。夜になって、神輿を3基、拝殿の前に出して祭式を行ったのだという。祭の当日は、氏子ばかりでなく多くの京童が参詣し、老若男女で賑わったとあります。
挿絵を見ると、練り物の様子が描かれているのが判ります。京都の夏は蒸し暑い。その上、祭見物でごった返していますから、団扇や扇は必須アイテムです。練り物の行列の男たちの手にも、団扇。それぞれに、「松」、「桜」、「近」、「ふくま」など屋号や銘を附したものになっているのが判ります。祭を楽しむ間は、しばし暑さも忘れるのか、観客は練り物を熱心に見物しています。
From:Yuki NISHINO